地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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22:56:54
 先月24日、経済産業省がクールジャパン戦略推進事業として採択された15案件を発表した(http://www.advertimes.com/20120724/article77385/)。これは9.2億円の予算を付けて、企業やクリエイター等の海外市場への展開を支援するもので、大きく分けて、1. 流通企業やデベロッパー等との連携、2. コンテンツを活用した連携、そして3. 地域資源の活用という3つの柱があり、各案件はそれらのいずれかに分類されている。ちなみに、提案された事業の現地イベントの費用や物品などの輸送費、広告費、人件費などが、経産省の事業委託費として拠出されるらしい。以下では、個人的に気になる「コンテンツを活用した連携」5案件を見てみる。
 まずはビープラッツの「VOCALOID TransPacificプロジェクト:VOCALOIDを活用した音楽ビジネス基盤創出プロジェクト」である。ビープラッツと言えばVOCALOID STOREを運営している会社だが、英語版VOCALOIDの販売に併せて、アメリカ西海岸及びハワイでボカロ・コンテンツを発表したり、配信・放送したり、あるいはプロモーションするためのプラットフォームを整備し、併せて関連グッズ販売やコラボレーションを推進する。海外でのボカロ関連事業はすでに中国や台湾で展開されているが、アメリカでも去年LAでMIKUNOPOLISが開催されたり(なかなかいいライブだった)、この春には初のボカロ専門WEBマガジンが発刊されているので、市場のポテンシャルは高いのかもしれない。
 次にBSフジの「インド市場 ジャパコン・キッズTV事業」。これはインドの子供層をターゲットに、インド国内のテレビ局と連携して「ジャパコン・キッズTV」を放送するとともに、関連商品(玩具、文具、子供用製品、アパレルなど)の販売を促進する。インドと言えば独自の巨大メディアコンテンツ市場が存在するわけだが、かつてSTAR TVがアジア市場を中華文化圏とインド文化圏に二分したように、日本のコンテンツが入っていくのは難しいイメージがある。子供向けのコンテンツがどういうものか具体的にはわからないが、インドで『巨人の星』を野球からクリケットに設定を変えてリメイクしたことが話題になったように、徹底したローカライゼーションが必要だと思われる。
 3つめは、シネコンを運営する東映系大手映画興行会社ティ・ジョイの「日本のコンテンツのためのニュー・アジアン・プラットフォーム」。日本のコンテンツを国内とほぼ同時期に香港・中国で公開しつつ、現地の映画館を中心に常設ショップを設置し、グッズやその他物販を行うというプロジェクトである。すでに中華圏で多くのシネコンを運営する大手映画会社オレンジスカイと提携しており、今後は中華圏全域の映画配給ネットワークの発展を目指す。日本映画にとってのアジア市場、そしてアジア映画にとっての日本市場が互いに重要度が高まる中、配給と映画館をマッチングし、コンテンツ共有とアウトレット確保に大きく役立てることで、国際映画流通の効率化を狙うのだろう。
 4つめは、「『料理の鉄人~Iron Chef』等日本のコンテンツを梃子にしたインドネシア日本食産業」で、インキュベーションインドネシア総合研究所によるもの。フジテレビの『料理の鉄人』はかつてアメリカでも大人気で、日本語版に飽き足らず、フォーマット販売され、アメリカ現地版まで作られていた。そのインドネシア版というわけだが、恐らく要点は日本の外食産業が絡んで、日本食の普及に役立てようとしている点だろうか。インドネシアは人口の上では巨大市場だが、これまで日本のポップカルチャーの浸透はそれほど盛んでなかったように見受けられる。ただ、AKB48初の海外姉妹グループJKT48が作られたり、現在注目を集める市場なのだろう。
 最後に、トヨタモーターセールス&マーケティングによる「クールジャパン流コンテンツ×車による相乗的プロモーション」で、タイを対象とする。「コンテンツと車のコラボレーションが目新しい」と評価されたらしい。いわゆるブランデッド・エンターテインメントだろうか。宣伝は今後、これまでのテレビCM的なプッシュ型から、よりコンテンツ化したプル型へと移行していくといった話をよく耳にする。しかし、例えばプロダクトプレイスメントなんかはアメリカの映画産業が伝統的に得意としてきた手法だが、日本では否定的な見方が少なくなかった。ノウハウが蓄積されていない状況で、いかも海外市場でこういったプロジェクトがどれくらい功を奏すのか、個人的には最も関心が高い案件ではある。
 全体を通してみるとハッキリわかるのだが、単体のコンテンツを特定市場でどのように流通させ、収益を上げるかといったプロジェクトはなく、全て関連事業が結びついたものになっている。最初の3つはコンテンツ×関連キャラクターグッズなどの消費財であり、4つ目はコンテンツ×食、そして最後のものはコンテンツ×車である。つまり、実はコンテンツが主ではなくて、それを取っ掛かりにして各種の財・サービスの市場を生み出そうというのがあくまで真の狙いなのである。まあ、それくらいの経済波及効果が見込める事業じゃないと、コンテンツだけでは予算付けるといってもなかなか理解は得られにくいだろうしね。
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プロフィール

Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
Twitter:@obagoro

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