地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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11:08:28
 1年前のBLOGOSの記事「ガラパゴスリモコンの終焉」などでなんとなくは知っていたのだが、本当にアメリカではブルーレイディスク(BD)レコーダーが販売されていない。家電量販店で探していると、最初はSonyやPanasonic、Samsungのものでも$100以下で売られているので、「売ってるじゃないか。しかもこんなに安く」と思ったのだが、よく見てみるとそれらは全てBDプレーヤーで、録画機能のない再生専用機だった。
 実は僕は日本ではBDレコーダーのヘビーユーザーだった。なぜかと言うと、テレビ番組を講義の資料として使うことが多かったからである。毎日いくつかのニュース番組・情報番組を予約録画し、夜に全てチェックし、講義で使えそうな部分があればそこだけをハードディスクに残しておいて、ある程度溜まったところでディスクにコピーするという作業を大学に勤務するようになってからずっと日課として続けてきた。
 もちろん現在アメリカでは講義を担当していないので、そのようなことをする必要はないのだが、日本の家電量販店で重要なスペースを占めるBDレコーダーがアメリカの店で全く売られていない様子を実際に目にすると、驚きを禁じ得なかった。では、なぜ日本では相当な需要があるBDレコーダーがアメリカでは売られていないのだろうか。
 まず、そもそも番組を録画するという習慣がないのかという点を考えてみたい。アメリカは放送済み番組のネット配信がかなり定着していて、多くの番組がネットで視聴可能である。NBC、ABCなどのネットワークのサイトに行けば、ネットで視聴可能な番組がずらっと揃っているし、「シンジケーション番組」と呼ばれる、ネットワークを超えて各局に販売される番組も各番組のサイトへ行けば、視聴可能である。キー局のサイトへ行っても、ほとんど番組を視聴できない日本とはこの点で大きな差がある。
 しかもアメリカの場合、Huluなどのビデオストリーミング・サービスにも各ネットワークから相当量の番組が集まっていて、無料で視聴することができる(有料会員$7.99もあり)。鳴り物入りで始まった日本のHulu(一律有料980円)に、肝心の日本国内のテレビ番組が揃っていないのとは全く対照的である。アメリカのように正規の番組配信サイトが充実していれば、「別にわざわざ録画しなくても、見逃したテレビ番組はネットでいつでも見られる」という考えに至っても不思議ではない。さらに、多くの世帯が加入しているケーブルテレビや衛星放送のチャンネルで人気番組の再放送を目にする機会も多いので、テレビ番組のプレミアム感、つまり「ここで見逃したら一生見られないかもしれない」という感覚は相対的に少なくなるはずである。このようにアメリカと日本では、リアルタイム視聴できなかった番組のその後の視聴機会が大きく異なるので、視聴者の番組録画に対するモチベーションは違っていて当然のようにも思える。
 やや話はそれるが、番組のネット配信が薄利ビジネスなのは、アメリカのネットワークも日本のキー局も恐らく大差がないはずなのだが、「それでもやらなければ」と思うか、それとも「それならやらない」と思うか、なぜ違いが生じるのだろうか。もちろん両国間で権利処理や運用に違いがあることは確かだが、より根本的な部分で、常に競争に晒されてきたアメリカのネットワークと、護送船団方式で守られてきた日本のキー局では、危機感が違うように感じられる。
 さて、もともとアメリカでも日本同様、VCRで番組録画をすることは一般的だったのが、その後、DVDに移行する中でレコーダーが売られなくなったのは、上記のようなネットでの番組配信が盛んになったこととある程度、期を同じくしてはいると思う。ただ、それでもアメリカ人はテレビ番組を録画しないわけではない。では、BDレコーダーが売られていないのにどうやって録画するのだろうか?
 実はケーブルテレビの契約をすると、家に「セットトップボックス」というチューナーが届けられるのだが、追加料金を出せば、デジタルビデオ・レコーダー(DVR)機能を加えることができる。衛星放送の場合も同様で、DVR機能付のレシーバーがある。ケーブルの場合だと、標準画質100時間分のハードディスクで月$10.95なので特に安いわけではないと思うが、利用者は多いようで、ニールセンによるとDVRの普及率は2007年5月の17%から2012年5月の43%に伸びてきている。我が家も利用しているのだが、日本で使っていたBDレコーダーに比べてリモコン操作の感度が悪かったり、画面が見づらいという不満はあるが、特に使えないわけではないし、人によっては、ネットで検索して番組視聴するよりも、こちらの方が楽かもしれない。こういったサービスがあるからBDレコーダーが市販されていないのか、それともBDレコーダーが市販されていないからこういったサービスが存在するのかは不明だが、いずれにせよ、テレビ番組を録画するという行為は多少なりともアメリカ人も行っているのである。
 ただしDVRで番組は録画できるものの、ハードディスクからディスクにコピーする機能はない。日本ではコンビニでも売ってるようなBDやDVDといったディスクも、アメリカではあまり売られていない。つまり日米のテレビ視聴者間にテレビ番組の扱いに違いがあるとすれば、「番組を録画する・しない」ではなく、「録画した番組をディスクにコピーする・しない」という点にある。
 実際にはアメリカだけじゃなくて、世界的に見てもBDレコーダーは売られておらず、ディスクへコピーするという行為はあまり行われていないようだ。ただし、日本のユーザーがディスクにコピーする理由は、先にあげたBLOGOSの記事にあるように、見たい番組をいつでも見られることが保証されておらず、コンテンツを手元に所有する必要性があるという理由だけでもないだろう。むしろ、そういうことをするのが好きな国民性もあるような気がする。番組をコピーしたディスクに、ネットでダウンロードした番組タイトルのラベルを綺麗にプリントして、ずらっと揃えるコレクター精神って、日本人に特有な感じがするのである。従って、仮に今後、日本でテレビ番組のネット配信が進んだとしても、案外、コンテンツをコピーしたディスクを蒐集する人は減らないのではないかと思う。
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プロフィール

大場吾郎

Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
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