地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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20:00:05
 錦織圭選手がUSオープン決勝に進出するってことで、日本中が急に熱くなりはじめている。日本時間の明日9日早朝には決勝戦だが、ここにきて問題となっているのは中継するのが有料放送WOWOWってことである。最近完全におかしくなっている朝日新聞(実はWOWOWの第7位株主で1.9%所有)なんかは「錦織圭の全米決勝、どうやって見る? 9日午前6時開始」なる記事で、完全にWOWOW契約の宣伝してしまっている。ちなみに朝日の別の記事「錦織効果、WOWOW申し込み殺到」によれば、WOWOWの加入者数は今年8月に約4万3千件が新規加入し、約264万らしい。ただ「錦織景気」でさらに増えるのは必至で、年度末時点でのピーク(01年度末の約266万)を超えそうな勢いだとか。でも仮にWOWOW契約世帯が260万としても、日本の全世帯の20分の1くらい、つまり20世帯に1世帯しか中継を見られないことになる。
 一方、民放が放送しないことに対する不満の声は高いようで、特にNHKには「何にために受信料払ってるんだ!」という声が届いているようだ(「なんのために受信料払ってんだ!」テニス錦織圭、歴史的快挙の裏で、なぜかNHKがとばっちり!)。「なぜ地上波で放送しないのか」などという人は、心情的にはわからなくもないが、やっぱり「見たいものは全て地上波が放送してくれる」といった前時代的感覚が抜けていない気がする。明日の錦織の試合を見たければWOWOWと契約すればいいだけの話だ。ましてや公共性云々を持ち出すのは、相当な勘違いである。日本人選手が世界的なスポーツ大会の決勝に登場するのは、それはそれは凄いことだが、別に日本に住むできるだけ多くの人が見るべきもの・知るべきものでもなく、あくまで見たい人が見ればいい。
 アメリカの有料放送産業を長年研究観察してきた身としては、今回のようなことをきっかけに「見たい番組のためにはカネ払おう」って意識が日本にも広まればいいと思う。上記のように、今回の中継でWOWOWは契約者数が伸びているようだが、アメリカでは有料放送がキラーコンテンツを奇貨として契約者数を伸ばすことは普通にある。例えば最近の例だと、映像配信サービスではあるが、NETFLIXも契約者を大きく増やすきっかけとなったのはオリジナルドラマ『ハウス・オブ・カード』だった。一方、ここにきてテニスの世界大会中継は突然WOWOWのキラーコンテンツ(目玉番組)になったわけだが、実はWOWOWは1990年代初頭から全豪、全仏、全米、2008年からは全英も放映してきたという経緯がある。WOWOWとしても、こんな日が来ると思って中継を続けてきたかどうかは定かではないが、少なくとも、NHKにも民放にも今回のような日本人選手の活躍がなければ話題にもならないようなコンテンツに投資する気はなかったと思う。そして、今回のように突如脚光を浴びるコンテンツの放送に地上波放送が今後どこまで対応できるかは心もとない。なぜならば、地上波放送はこれまで以上に確実に視聴率が取れそうなもの、つまり即効性がありそうなものにしか触手を伸ばさなくなってきているように見えるし、その意味では地味なコンテンツを育てる余裕はなさそうだし、その一方で、視聴者の嗜好細分化の中で確実に視聴率が取れそうな番組なんてますます見つけ出すのが困難になってきているからである。とは言っても、地上波放送には「人気が出てきたからカネにモノ言わせて横取りする」っていう伝家の宝刀があるし、現実問題として放映権ビジネスはやはり資金力で決まる部分が大きい。いまだに圧倒的な資金力を持つ地上波放送に、有料放送がコンテンツ獲得で拮抗する日は、やはり日本では遠いのだろうか。
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プロフィール

Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
Twitter:@obagoro

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