地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
2017/04«│ 2017/05| 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 »2017/06
文字サイズ文字サイズ:大文字サイズ:中文字サイズ:小
--:--:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Category:スポンサー広告│ コメント:--│ トラックバック :--
23:14:57
 今年4月にAdobeが発表した、米英仏独日の1000名ずつ計5000名を対象に行ったアンケート調査で、日本は「世界一クリエイティブな国」に選ばれた(http://agora-web.jp/archives/1478863.html)。面白いのは、日本のクリエイティビティが国内よりも諸外国で高く評価されている点であり、実際、日本は参加5か国の総合では「最もクリエイティブ」と評価されたものの、内訳を見ると自己評価は低く、「自国がクリエイティブ」と答えた人の割合はトップのアメリカの52%に対してわずか19%で、5か国中最下位だった。まあ、自分に厳しいのは日本人らしいと言えば日本人らしいとも思えるのだが、なぜ日本人は日本のクリエイティビティに気づいていないのか(あるいは認めていないのか)を考えてみたい。
 まず考えられるのは、日本人の多くが日本のクリエイティビティを実感する機会が少なく、気づいていないということ。例えば、北米や西欧、東・東南アジアである一定期間生活した経験や、そういった地域出身者と接する機会があれば、特に意識しなくても日本のポップカルチャー(アニメ、マンガ、J-POP、ファッション、食etc)が現地で受容・浸透していることを実感する機会も多いだろう。もちろんクリエイティブだから日本のポップカルチャーが受け入れられているとは限らないが、人気の理由を現地で外国人に尋ねてみれば、このアンケート調査に現れているように「クリエイティブだから」という声を多く聞くことはできるだろう。さらに重要なのは、外国生活を経験すれば、外国のポップカルチャーと日本のそれを実際に相対化する機会に恵まれるため、結果として日本のポップカルチャーのクリエイティビティに気づかされる。僕はこれまで割とこのように「日本人ってよくこんなこと考え出せるな」と感じることが多かった。
 次に、日本のクリエイティビティを認めないという考え方である。例えば、日本のポップカルチャーの多くは元来、欧米にその起源をもつものも多く、それを日本風にアレンジしたものであるがゆえ、オリジナルである欧米のものに比して下位に属すると考える人はいるだろう。また、そもそもポップカルチャー自体を価値のないものと考える人も高齢者を中心に依然存在すると思われるが、実はポップカルチャーを支える若年オタク層にもそういう考えの人はいるかもしれない。オタクの特性として大澤真幸は「アイロニカルな没入」を挙げるが、その根底にあるのは、アニメやゲーム、マンガやアイドルといったものにハマる一方で、社会的規範に基づいた場合のそれらの意味のなさや価値の低さへの自覚であると指摘する(『電子メディア論』、1995年)。「客観的に見れば日本のポップカルチャーは取るに足らないものであり、そんなものを好む自分が特殊なのであって、世間一般では認められないだろう」という、ある種の自虐的態度はオタク層に特有なものである。日本のポップカルチャーを否定するのであれば、当然そこにクリエイティビティは見出しにくい。
 最後に、日本のメディアが日本のクリエイティビティをきちんと伝えないことが考えられる。過去10年くらいの間、「クールジャパン」なる言葉が喧伝されるようになるにつれて、海外での日本のポップカルチャーの人気をリポートする記事や特集は増えたと思われるが、日本のメディアが取り上げる場合、上記のとおり、その魅力を日本人記者が理解できないこともあって、「なぜ!?」みたいな懐疑的な内容のものが少なくなかった。むしろ逆に、海外のメディアの方がきちんとその魅力について分析・報道をしてきた感がある。結果として前者を眼にする日本人読者らには日本のクリエイティビティが伝わらず、後者を眼にする外国人読者らには理解されてきたのかもしれない。日本のメディアだって、日本のポップカルチャーの海外での受容が自分たちの収益に直結するならば、提灯記事みたいなものも含めて、「日本のポップカルチャーはクリエイティブ」などと褒めちぎるはずだが、概して彼らは海外市場展開には熱心じゃないし、そもそも日本人消費者に向けてアピールするインセンティブがない。それよりは自分たちのビジネスに直結する外国製コンテンツの魅力を日本市場で伝えることに血道を上げるのだろう(韓国ドラマやK-POPの持ち上げ方を見ればわかる)。
スポンサーサイト


コメント
コメントの投稿










トラックバック
トラックバックURL
→http://obagoro.blog.fc2.com/tb.php/13-a8c86980
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

大場吾郎

Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
Twitter:@obagoro

obagoro's books
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。