地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
2017/05«│ 2017/06| 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 »2017/07
文字サイズ文字サイズ:大文字サイズ:中文字サイズ:小
--:--:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Category:スポンサー広告│ コメント:--│ トラックバック :--
23:52:19
 8月10日の李明博・韓国大統領の竹島(韓国名・独島)上陸に続き、ロンドン五輪では韓国人サッカー選手が領土問題をめぐって反日宣伝行為を行った。領土問題のみならず、既に解決済の過去補償の問題も相変わらず蒸し返され、あげくの果てには天皇陛下への謝罪要求まで飛び出した。もちろん韓国ではこれまでも対日強硬路線が幅を利かせてきた経緯があるが、今回の一連の出来事はかつてないほど失礼極まりないものだし、これまで守ってきた一線を越えてしまった印象がある。レームダックな李政権が愛国・民族主義に訴えかけて人気回復を目指しているだけと看過できるものでもない。
 とにかく韓国では現在、反日活動なら何でもありという状態になってしまっているようだ。そのような中、俳優のソン・イルグクが竹島への上陸を目指した韓国のリレー水泳に参加したことを受けて、BS日テレとBSジャパンは彼が出演するドラマの放映を延期した。こういった名前も知らない俳優が出演するドラマが2局で放送されていたという事実に、日本の放送メディアの韓国ドラマ依存体質を再認識したが、この放送中止が意味することは小さくない。
 韓国の芸能人はこれまでも「独島は我々の領土だ」という政治的言動を行っている。日本でも知名度が高いところで言うと、俳優のキム・テヒがスイスでの独島キャンペーンに「独島愛Tシャツ」を着て参加し、韓国領であることをアピールしている。少女時代はある行事のリハーサルで「独島は我々の島」という歌を歌っている。ぺ・ヨンジュンもホームページで「独島は韓国の領土である」と述べている。もちろん、これらを日本のマスメディアはほとんど伝えない。なぜなら彼らは日本のマスメディアにとって大事な商品なのだから、反日活動という悪印象につながるニュースは封殺される。その意味で、今回の放送延期は思い切った決断だと思う。
 別に韓国の芸能人が竹島に関してどういった言動をするのも自由だし、本人の意思をどこまで反映したものなのかもわからない。韓国では反日的な発言や行動をすることで評価される風潮もあるかもしれないし、現地で人気を保つためにはそういった言動が必要なのだろう。また、世界的に見れば、芸能人が政治的な言動をすることは別段珍しいことではなく、例えばアメリカの俳優やアーティストも政治集会に参加したりして、自身の政治的信条を表明する人は多い。ただし、人気商売であるがゆえ、自分たちの言動のリスクを負う覚悟が必要なことは言うまでもない。日本の芸能人はあまり政治的な発言をしない印象があるが、そうすることでリスクを回避するのも1つの選択だ。
 「独島は韓国領」と声高に主張する韓国の芸能人は、そのような言動が日本市場での芸能活動に及ぼす影響をどう考えているのだろうか。実は、日本は「世界最大の韓流市場」である。例えば「世界中で人気」などと韓国側が喧伝するK-POPだが、実に海外での売り上げの80.8%が日本市場においてであるし、韓国ドラマにしても、日本での放送本数の多さに加え、一部の日本のバイヤーが値段を釣り上げたと言われる。つまり韓流は日本市場への一極集中依存体質を持つものなのである。そして、そのことを韓国の芸能界が熟知しているからこそ、彼らは徹底して商品を日本市場に合わせてくる。日本語で歌うのもそうだし、日本人視聴者を意識したドラマが作られるのもそうだ。普通のビジネスの感覚を持ってすると、このように重要な顧客の嗜好に製品やサービスを合わせるのは理解可能である。しかし同時に、普通のビジネスの感覚を持ってすると、重要な顧客に不利益を被らせるような言動を取るのは理解不可能である。面従腹背というか、デリカシーが欠如しているとは思うが、実際に彼らが日本に対して行っているのはこういったことである。ただ、韓国側にしてみれば別に罪悪感があるわけではなく、日本市場に韓国ドラマやK-POPに対する需要があるから、(本意ではないかもしれないが)そこでビジネスを展開しているに過ぎないという感覚なのかもしれない。
 コンテンツを供給する韓国の姿勢以上に注視すべきは、それに対して需要が存在すると思われている日本の姿勢である。ただし、韓国ドラマを流したり、K-POPを取り上げるマスメディアの行動原理は比較的単純だ。原則として彼らは儲かればやるし、儲からなければやらない。反日女優と噂されるキム・テヒをドラマやCMに使うくらい、日本の企業は韓国芸能人の政治活動には無頓着だった(その意味でも、やはり今回の放送中止は驚いた)。
 むしろ興味深いのは、そういった韓国コンテンツを好む視聴者や読者の考え方である。「なぜ反日的な活動をする俳優やアーティストを応援するのか?」という問いかけには、ほぼ間違いなく以下のような答えが返ってくると思われる。「政治とエンタメは別だから…」。演技なり歌なりが素晴らしいとか、「あばたもえくぼ」みたいなファン心理もあるのかもしれない。現に竹島遠泳を行った俳優ソン・イルグクにも理解を示すような声が寄せられているという。確かに政治問題と大衆文化は本来別次元のものだし、区分されて然るべきものである。政治とは無関係の文化や芸術が何かしらの政治的な意図によって市場から制限や排除されるようなことがあれば、当然理不尽さを覚えるだろう。ただ、ここまで記してきたように、一部の韓国の俳優なりアーティストは実際に日本の国益を損なわせるような政治活動を行っているのである。
 そもそも韓国では、大衆文化交流は政治的要因に左右されて然るべきると考える人は少なくない。幣著『韓国で日本のテレビ番組はどう見られているのか』で詳細に論じたが、韓国では日本の大衆文化を長年規制してきた経緯があり、テレビ番組はいまだにジャンルによっては放送されない。これは主に民族的な感情に対する配慮が原因となっていると考えられる。若い世代では「日本のものでも良いものは良い」と考える人も少なくないが、中高年以上の世代では「日本のものは絶対ダメ」と考える人がまだまだ多い。調査の過程で韓国の文化政策担当者と会談した際、日本のテレビ番組放送に対する規制緩和のために何が必要か質すと、開放のための名分を日本が韓国に与える必要があると言い、一例として竹島問題での日本の譲歩を挙げてきた。当然行われるべき大衆文化開放のために国家主権にかかわる領土問題で妥協しろとは到底理解しがたい話だが、冗談には聞こえなかった。上述の通り「政治と文化は切り離して考えるべき」という考え方に基本的には賛成だし、それが理想だと思うが、日本が今向きあっている韓国は、大衆文化を外交問題解消の取引材料として利用しようとしている国であり、文化交流、特に日本とのそれは政治的枠組みの中で行われて然るべきと考える国なのである。「政治と大衆文化は別物」という言葉は非常に安易に使われがちだが、果たして単純にそのように言ってしまって良いのか、今回の韓国ドラマ放映中止は我々日本人に問うているような気がする。
スポンサーサイト


コメント
コメントの投稿










トラックバック
トラックバックURL
→http://obagoro.blog.fc2.com/tb.php/14-6eaf6025
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

大場吾郎

Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
Twitter:@obagoro

obagoro's books
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。