地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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20:56:19
 日本のバラエティ番組の海外展開の方法として、話題になることも多いフォーマット販売だが、国が支援に乗り出すようだ(http://eiga.com/news/20120911/14/)。ところで、そもそも番組フォーマット販売とは何か。ちなみに僕は著書『韓国で日本のテレビ番組はどう見られているのか』の第6章「バラエティ番組:パクリとフォーマット販売」で、相当ページを割いてフォーマット販売を説明しているので、関心ある方はそちらもご覧頂きたい。多分、日本の図書文献の中でフォーマット販売をここまで細かく説明しているものはないと自負している。話を戻すが、テレビ番組のフォーマット販売とは、ある番組のコンセプトや構成、演出方法などをパッケージ化し、1つの権利(フォーマット権)として海外市場の番組制作者に販売することである。
 世界的に有名な番組フォーマット販売の代表作としては、イギリスの番組プロダクションが開発した『Who Wants to Be a Millionaire?』が挙げられる。これは、世界の約70カ国へフォーマット販売され、各国版が制作された。面白いのは、国ごとに多少の違いは見られるものの、番組の進行やスタジオセット、音楽、照明、コンピューターシステムに至るまで、概ね世界的に統一されている点だ。日本ではフジテレビがフォーマットを購入し、日本版である『クイズ$ミリオネア』が制作・放送されたことを覚えている人も多いだろう。僕は日本版、アメリカ版、あと映画『スラムドッグ・ミリオネア』でインド版を見たが、確かに出演者や言語以外は統一されている印象を受けた。
 一方、日本の番組のフォーマットが海外に売られることもある。この分野はTBSが一生懸命やっていて、『風雲!たけし城』や『SASUKE』は100か国以上に番組フォーマットが販売されている。あと、フジテレビの『料理の鉄人』は当初、アメリカで日本版が放送されていたが、反響が大きかったためアメリカ現地版を作り始めた。こちらもアメリカに暮らしていた時に見たが、廉価版コピーみたいなイマイチな出来で、全体的にそれほどオリジナルに忠実な感じでもなかったと記憶している。
 さて、番組フォーマット販売の長所とは何だろうか。まず、既に完成した番組を海外へ輸出販売するのと違って、権利処理が楽な点が挙げられる。かつての記事(「海外に売れない日本の番組」)でも書いたように、日本の番組は海外販売に際して、とにかく権利処理上の制約が多い。中でも権利処理の煩雑さと費用は頭が痛いところだが、フォーマット販売はコンセプトや企画を売るものなので、そういった部分に悩まずに済む。そしてもう1つ、言語や出演者、番組のディテールをそれぞれの国・市場に合わせて変更できる点も大きい。みのもんたさんが日本語でMCをやり、顔なじみのタレントらが出演する『クイズ・ミリオネア』だから日本の視聴者は見るのであって、それがイギリスのオリジナル版だったら、日本の視聴者への魅力はかなり割引されてしまう。また、売る側にしてみれば、一度フォーマットを売れば、買った側が番組を放送し続ける限り、定期的に収入が入ってくる点も大きい。
 では逆に、番組フォーマット販売の短所は何だろうか。まずは、フォーマット販売という形式自体に対する理解がまだまだ世界的に共有されていると言えない点が挙げられる。「フォーマット権」といっても、それは著作権のように法的に保護されるものではなく、フォーマット販売は、いわば売る側と買う側の間の契約に基づいた商取引である。ここで販売される番組の企画やコンセプトはそもそも著作権で守られるものではないため、これまでテレビ番組に関する剽窃や盗作、パクリの類の話は、噂レベルのものも含めて、本当に多かった。このようにパクれば無料で済むものに対して、きちんと契約をして、カネを払うのがフォーマット販売なのだが、パクリに慣れてしまっている制作者に受け入れられるだろうか。ただしこの点は、長年にわたって日本の番組のパクリが横行していた韓国でも最近はフォーマット契約を遵守するようになってきているというから、時間とともに慣習化するのかもしれない…と書いていたそばから、また韓国のパクリが発覚した(http://news.livedoor.com/article/detail/6936567/)。
 また、フォーマット販売の場合、買った側が自国市場に合わせて細部をローカライズするわけで、それが利点だと先に記したが、このことは、原産国のイメージが綺麗さっぱり消され、あたかも購入国のオリジナル制作番組のように見えることを意味する。このようなフォーマット販売の性質ゆえに、テレビ番組の国際流通を文化交流の一環として捉えようとした場合、そこにフォーマット販売された番組が寄与できる部分は実は少ない。例えば外国人が日本のドラマ視聴を通じて、日本文化や日本人的なものに触れることは可能だろうが、自国用に作り替えられたバラエティ番組を見て、そのようなものを感じることは難しい。
 あと、日本でいうところのバラエティ番組は多種多様で、「これがバラエティ番組だ」という定型を持たないが、フォーマット販売する場合には、実は企画によって売りやすい・売りにくいがあるように思える。例えば、『ミリオネア』の例からわかるように、クイズ番組はやりやすそうである。また、体を使ったチャレンジ系もフォーマット販売しやすそうだ。先の例でいうと、『風雲!たけし城』や『SASUKE』がこれに該当する。一方、今日主流となっている、スタジオに雛壇があって、芸人やタレントがトークを展開するバラエティ番組は難しいかもしれない。まず、一部の東アジア諸国を除いて、あのような番組スタイルはおそらく存在しないため、たとえ自国の芸能人を使ったとしても、出演者・視聴者ともに番組スタイルそのものに馴染めない。トークにおける笑いのツボが異文化環境では随分違う点も、負に働きそうだ。結局、番組の企画やコンセプトを売るとなった時に、やはり万国共通のわかりやすさ、特に見た目のわかりやすさは重要だと思われる。その意味でも、トーク中心の番組はやはりつらい。
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││2012/09/25(Tue)10:39:36│ 編集
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Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
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