地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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22:19:05
 今週の「Newsweek」のカヴァーストーリーは「息切れクールジャパン」。日本のポップカルチャーの海外展開に陰りが見え始めているという内容。

 日本のポップカルチャーがアメリカに広がり始めていると僕が実感したのは1997年、当時勤務していたテレビ局の研修で彼の地へ留学をしていた時だった。アメリカの街にはカートゥーンやらトレカやらTシャツやらを売るようなゴチャゴチャしたサブカル系の店がよくあるのだが、そこで日本のアニメキャラのグッズなんかが目についた。そういったムーヴメントは2001年に再びアメリカで住み始めた頃にはもっと大きくなっていて、僕がメディア系の大学院にいたせいもあると思うが、日本のアニメやマンガのことを聞かれる機会も多かった。ダグラス・マグレイが「日本は文化的にカッコいい国」などという論文を発表し、話題になったのもその頃だ。

 今から4~5年前、知り合いのアメリカ人教授が研修で十数人の学生を京都に連れてきた。神社仏閣以上に彼らを夢中にしたのはアニメイトであり、ブックオフだった。その数日前には秋葉原にも行っているはずなんだけど…。そのうちの1人が僕に「京都でどうしても行きたいところがあるからアポを取ってくれ」と言う。どこか尋ねると、Nintendoだと言った。来日の最大の楽しみは、アニメやマンガ、ゲームの本場の空気に浸ることのようでもあった。

 それが今じゃ失速してるってことか…でも、なぜだろう?ひょっとしたら、飽きられ始めているのかなと思う。大体、マグレイには悪いが、日本のポップカルチャーを総体として考えた時に「カッコいい」という捉えられ方は主流ではなく(もちろん一部のアニメ作品がそういう評価を受けていたことは否定しないが)、むしろ、オタク、コスプレ、アイドル等々、なんかよくわからないが新奇で、変わってるというような印象だったのではないだろうか。そういうものであれば、人々は面白がって飛びつくが、やはり飽きられやすい。

 Newsweekにもある通り、本質的にはカッコいいと捉えられていないものに「クールジャパン」などという呼称は確かにアンクールだし、そもそも多様なジャンルや作品が存在する中で、それらの個別性を超えた呼称には無理がある。ただまあ、それは便宜的にという面もあるだろうし…(そう考えると「韓流」というネーミングはなかなかいいが、やってることを見ると、自国人が自国文化をカッコいいと宣伝してしまってるところは、日本も韓国も一緒だ)。

 もう1つの重要な論点は、よく指摘される点だが、人気がある割にビジネスとして成立していないという点。日本のポップカルチャーの多くは元々、国内市場だけを向いて制作・販売されていたわけで、海外でも人気が出てきたというのは想定外の偶発的な出来事であり、そこには戦略などあるはずがない。むしろ、海外市場で大して何も仕掛けてないのに、これだけ人気が出たことの方が驚きだ。でも、それではなかなか収益には結びつかない。

 経産省がメディアコンテンツ課を立ち上げ、「これは日本の主要産業になるかも」と公的援助を導入し、官民一体になってポップカルチャー振興に努めるのは結構な話だが、彼らが乗り出した頃から、海外における日本のポップカルチャー熱が冷め始めたとしたら、皮肉な話だ。所詮、多くはポップカルチャーと縁遠い所にいた官僚たちであり、割り振られた枠内で厳正に予算を執行することが最重要課題なのかもしれない。

 一体どうすればいいのか。なかなか難しい。これまで培ってきた作品作りのノウハウや創造性、あと人的資源なんかを考えると、日本のポップカルチャーがそう簡単にダメになるはずはないと思うのだが、それでもスキームとしてはある程度の方向性の変更や、選択と集中を再検討する時期なのかもしれない。しばらく注視する必要がありそうだ。



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Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
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