地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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21:40:40
 週末に情報通信学会主催のフォーラムがあったので行ってきた。「クールジャパン 放送番組・海外展開の新時代」と題されたもので、1部は「最新の中国ネット映像配信事情」、2部は「海外番組展開」がテーマだった。
 一般に「クールジャパン」は日本製コンテンツ全般を指すと考えられるが、実質的にはアニメ・漫画・ゲーム、せいぜいJ-POPや邦画までで、その対象にテレビ番組が含まれることは珍しい。ドラマやバラエティ番組などは、恐らく日本国内では最も人気が高いジャンルだが、国際競争力は低い。海外市場での人気・需要が低いわけではないと思うが(事実、動画の違法流通はすごい)、実績には結びついておらず、クールジャパンを推進する経済産業省の構想からもテレビ番組は抜け落ちていることが多い。
 なぜテレビ番組の海外展開がうまくいかないのか。この点に関しては、これまで結構多く語られてきたし、僕もちょこちょこ書いたりしてきた(ご関心があれば、弊ブログの過去のエントリー「海外に売れない日本のテレビ番組①~④」をご覧ください)。今回のフォーラムでもテレビ番組の海外流通の阻害要因が相変わらず指摘されていた。もう何年も前から指摘されている問題点が改善されないということは、改善できないのか、それとも改善する気がないのか…そのどちらかと捉えられても不思議ではない。
 ただ、そんな中で、ちょっと面白いやりとりがあった。フロアの聴衆から「テレビ局は国内の視聴率競争にだけ明け暮れ、海外市場を見ていないのではないか」という趣旨の意見が出された。これまでそういった傾向があったことは否定できない。キー局をはじめとするテレビ局は世界第2位のテレビ市場を背景に、内需だけで十分すぎる利益を上げてきた。売り上げの1%にも満たないような海外ビジネスに注力する必然性や動機がなかったのである。
 この発言を受け、日本テレビで番組海外販売に携わる君嶋由紀子さんが、最近は番組制作者の意識に変化が生じていて、プロデューサーやディレクターが「番組を海外に出したい」と相談してくると述べた。これが本当だとしたら、確かに変動が起きつつあると言える。これまでのように既存の番組の2次利用の1つとして海外に出すというよりは、最初からある程度、海外市場を視野に入れた番組作りをすることを含んでいると思われるのだから。
 テレビ番組の海外での販売不振は、輸出先である現地市場の事情(例えば規制など)を除けば、実は日本のテレビ番組の作り自体に起因するものも多いと考えられる。例えば、音楽原盤権処理の問題などは、番組BGMで洋楽を使わないとか、MAと呼ばれる音処理終了後もマルチトラックテープを残すなどしておけば、かなりの部分が回避できる問題である(専門的な話だが、細かく説明し始めると相当な字数が必要になるので、ここでは省略する)。つまり、番組制作者であるプロデューサーとかディレクターの裁量でどうにでもなる問題のはずであり、今までそれをやってこなかっただけなのだ。
 あともう一点、よく指摘されるドラマ話数の問題がある。日本のドラマの標準である1クール全11~12話では話数が少なすぎて、海外の買い手が嫌がるという話だ。平日に1話ずつ放送すると2週間ちょっとで終わってしまい、視聴習慣がつきにくく、スポンサーも嫌がる。しかし、海外標準に合わせて話数を増やすというのは、日本の放送習慣を変えることでもあり、ハードルは高い。
 ただ一方で、あまり紹介されないが、以下のような声もある。日本以外の国の視聴者(特に若い視聴者)にとってドラマはネット配信を見ることが定着しつつあるが、この場合、話数が11~12話というのは、数日で一気に見てしまうのにちょうどいい量である。また、日本のドラマはストーリーが凝縮されているのに対し、逆に他国のものはダラダラと話数だけが多くて、中弛みしているものも多いと言われている。つまり、「ドラマ話数が少ないこと」は、買い手である現地放送局には嫌がられるかもしれないが、現地視聴者の受けは悪くないのである。
 これらのことを考慮すれば、各国の動画サイトに正式にコンテンツを提供していくことが、実は日本のテレビ番組の海外展開にとっては活路を見出す上で必然であるような気がする。しかも、日本のドラマの多くは若い視聴者をターゲットに作られており、この点からもネット配信との親和性は高いはずだ。各国の放送事業者に数回の放映権だけを売るといった従来のビジネスからの脱却し、ネット配信へシフトチェンジして行くという、これまでの弱点を逆手に取るようなビジネス・スキームの転換が望まれるはずだが、そのようなビジョンを日本の放送事業者から聞くことはあまりない。
 それについては、きっと販売する側にも、権利処理が複雑とか、海外のネット事業者に売っても儲けにならないとか、違法流通が増えるだけだとか、諸般の事情があるのだと思う。権利に関しては、今や他国ではオールライツ(放送だけでなく、ネットなどその他のメディアでの流通も可能な包括的契約)が常識となっている。それができないのならば、上記の理由により、せめて放映権よりもネット権を優先した方が良いのではないかと思う。収益性については、具体的な数字のデータがないので何とも言えないが、現実的にはここがネックのような気がする。ただ、これまでの放映権販売と異なり、非独占ライセンスとなるだろうから、薄利多売によって利益最大化を目指すということになる(テレビ局と薄利多売って似合わない気もするが…)。最後に、違法流通だが、正規版を出せば、ライセンシーである現地市場の動画配信事業者も自社の利権に絡む問題なので、違法動画サイト対策に乗り出すだろう。これまでのように、日本のテレビ局が徒手空拳で海外市場の違法流通撲滅に立ち向かうよりは、はるかに効果的なのではないだろうか。
 国内でも進展しない番組のネット配信を海外で行えるのかという疑問があるが、実際にそういったケースは少しずつ出始めている。その中から成功例が出れば、「海外はネット配信で」が1つのビジネスモデルになる可能性はある。
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Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
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