地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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11:02:30
 アメリカの家電量販店へ行くと最近の主力商品はスマートテレビである。スマートテレビが注目される理由は簡単で、映像コンテンツサービスの総合端末として利便性が高いである。スイッチを入れれば、ホーム画面には様々なアプリのアイコンが並び、テレビ放送のみならず、インターネットはもちろん動画サイトやオンディマンド配信サービスをはじめゲーム、SNSなど様々なコンテンツを提供するサービスにアクセスできる。ちょっと複雑な言い方になるが「テレビ画面というのは最早テレビ放送を通してテレビ番組を見るためだけのものじゃないんだな」と実感できる。
 アメリカだけじゃなくて、恐らく世界的にテレビ利用はそのような方向へ進んでいると思われるのだが、そのような潮流に逆行しているように見えるのが日本である。でも、日本でスマートTVの普及は、アメリカのNetflixやHuluのように魅了的な動画ストリーミング配信サービスがないので難しいかなとも思っていた。家に居ながらにして映画見放題でレンタルビデオ業をつぶしたと言われるNetflixに比類するサービスはないし、Huluを見ても、ネットワークのドラマやショーが豊富で見逃し視聴にも対応するアメリカ版に比べ、日本版はテレビ番組コンテンツのラインアップが圧倒的に弱い。映像コンテンツのネット配信は日米で(技術的な面ではなくコンテンツの充実度という意味で)もう何周も差がついてしまっているのである。
 そのような状況下で、映像コンテンツ産業の中心であるテレビ放送産業がスマートTVにどのように対応するのかは興味があった。実は、スマートTVはテレビ放送産業にとっても追い風になると思っていたからだ。うまく動画サイトやSNSと番組を連動させれば、スマートTVという同じ端末で両者を楽しむことができるし、結局はテレビ視聴が楽しくなるんじゃないかと思えたからだ。
 ところが、ちょっとこれは酷いと思えるニュースが入ってきた。7月7日の朝日新聞デジタルによれば、パナソニックの新型スマートテレビ「スマートビエラ」のCM放送を民放キー局が拒否した。テレビ起動時に、放送中の番組の右側と下に、放送とは関係ないサイトや、ネット動画にアクセスできる画面が表示されることを問題視してのことらしい。でも、スマートテレビのインターフェースってそういうものだと思うんだが…。関係業界で定めた技術ルールに違反するとか、そのことでユーザーが放送番組とネット情報を混同する恐れがあるとして表示方法の変更を求めているというが、テレビとネット間に情報メディアとしての補完性があることは明らかだし、日本のユーザーの多くは放送番組とネット情報をうまく使いわけるくらいの力は持っていると思われる。贔屓目に解釈しても取り越し苦労、実際には「テレビ画面をテレビ放送以外に使われたくない」というキー局側の本心の現れのようにも思えるのだが、もしそうだとしたら、こういった偏狭さはなんとかならないのだろうか。また、民放キー局が拒否したということは、各局で「これは放送中止にしよう」って談合でもしたのだろうか。こういう所にも横並び体質が現れているようだ。
 全ては業界の理屈だけで動いていて、視聴者は置き去り。遅々として進まない番組のネット配信も含めて、こう思えることは結構多い。個人的には業界のビジネス論理をある程度は理解してはいるつもりだが、世の中の多くの視聴者にとっては理解不能で、ただただ不便と思うだけだろう。さすがに民放各局も最近は公共性って言わなくなったと思ったが、上記の「放送番組とネット情報を混同されては困る」発言は、8年前にネット企業に買収されそうになった時に詭弁として公共性がしきりに持ち出されていたことを思い出した。「自分たちは特別」っていう意識はあまり変わってないようにも見受けられる。
 その一方で、パナソニックと言えば超大手広告主なわけで、民放側も並々ならぬ決意でCM拒否したんだろうとは思う。パナソニックの広報は「放送局側と協議して放送と通信の新たなルール作りを進めているところなので、現時点ではコメントを控えたい」と言っているが、一体どういう決着を迎えるんだろう。日本のスマートテレビの今後の道筋をつけるうえでも重要だと思われる。
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大場吾郎

Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
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