地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
2017/04«│ 2017/05| 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 »2017/06
文字サイズ文字サイズ:大文字サイズ:中文字サイズ:小
--:--:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Category:スポンサー広告│ コメント:--│ トラックバック :--
13:17:13
 田原総一朗さんが書いていたと思うのだが、かつて日本には「ソ連嫌いのロシア好き」という言葉があったらしい。国家としてのソ連は嫌いだが、ロシア民謡などは好きといった意味である。同様に、共産党独裁の中国は嫌いだが、深い歴史を持つ中国文化に魅かれる人は多かった。両国の例は、国と文化の関係の捉え方としては自然なものだと思う。「政治と大衆文化は別」という言辞は陳腐な感じがするが、普遍的な共感を得るだろうし、今さらここで強調する必要もなく、そうあるべきだと思う。
 先日の宮島理さんの記事のように「日本は嫌いだけど日本文化は好き」もあって然るべきである。世論調査では「日本は嫌い」という意見が多く聞かれる韓国や中国でも、日本文化を好む人は多い。以前、韓国における日本のポップカルチャー受容を調査するためにフォーカスグループでヒアリングを行った際に非常に印象的だったことがある。40代の人たちはとにかく日本否定で、「日本の大衆文化なんてもってのほか」という意見が出たのに対し、20代からは「日本のものでも良いものは良い」という声が聞かれた。若者らはどこの国のものであろうと、面白かったり、カッコ良ければ受け入れるようだったが、中高年にとっては「日本のもの」が特別な意味(もちろん悪い意味)を持ち、内容ではない。ただ、この話にはもう一展開あって、では韓国の若者たちが日本を好きかというと、別に好きではないのである。むしろ政治や歴史問題を考えると、日本という国に良い印象は持っていない。
 前にもブログ「ポップカルチャーに過大な期待をしていいものか」で書いたのだが、クールジャパンを推進する政治家や官僚たちは「日本のポップカルチャーが外国人の日本観を変える」と意気揚々に話すが、本当にそのような力を信じているなら、なぜ韓国とか中国で戦略的にクールジャパンを展開しないのか不思議である。彼らの言葉を借りれば、韓国や中国は「超重要なパートナー」だったり「価値観を共有している」わけで、そうであれば対日感情の好転を願うのが当然だろう。未来志向を掲げるのならば、若い韓国人・中国人たちの対日感情は特に大切なはずだ。彼らが好むアニメとかアイドルとかJ-POPには日本ファンを増やす力があるのではなかったのか?「韓国とか中国は日本のポップカルチャーには規制があって…」などと言い訳が聞こえてきそうだが、そこをなんとかするのが政治ではないだろうか。いまだに日本のドラマやバラエティ番組は韓国の地上波放送から事実上締め出されているわけだし。
 その一方で、クールジャパン政策では相変わらず、「日本のコンテンツがその他の産業に経済波及効果をもたらす」という話がまことしやかに語られている。それで、関係者に実証的な裏付けを質すと、決まって出てくるのが「韓流がそのように成功したから」という話である。クールジャパンの名のもとに、税金を使ってコンテンツの海外展開をすることに批判は多い。そこで他産業も巻き込んだ経済波及効果を打ち上げたものの、理論的根拠が少ない。そこで韓流モデルにすがるわけである。経産省JETRO日経新聞も、判で押したように韓流が韓国製品の輸出に寄与した話を取り上げている。しかし、コンテンツ普及とそこに登場する製品のセールス間の因果関係が不明である点に関する指摘は皆無である。そもそも、本当にコンテンツにそのような力があるのならば、なぜ韓流最大の市場である日本で韓国製品・ブランドは浸透しないのだろうか。
 個人的に、クールジャパンが韓流の後追いを目指すことには違和感を覚える。日本と韓国ではコンテンツをめぐる諸条件が違う。韓国がやったように、まずはコンテンツに触れてもらうために廉価で海外にコンテンツを提供したり、海賊版に目をつぶるような覚悟が日本のコンテンツホルダーにあるだろうか。しかも、ベトナムや台湾など、歴史的経緯から韓国に対する感情が悪い市場で敢えてコンテンツを流通させるようなことを日本のコンテンツ実務家や政策担当者はできるだろうか(くどいようだが、それならば是非とも韓国・中国で重点的に展開してほしいものだ)。
 また、日本と韓国では諸外国における消費財ブランドの認知度も異なっている。コンテンツを使ったマスプロモーションは新興ブランドの認知度を比較的短期間で高めるには有力かもしれないが、十数年前までほとんど海外市場での知られていなかった韓国製品と違って、多くの日本製品はコンテンツを使って認知やイメージアップを図る必要性はそれほど高くはないだろう。ちなみに今、中国のブランドがハリウッド映画での露出を切望するのは上記のようなロジックである。
 韓国政府がコンテンツ産業の支援に大々的に乗り出していることを賞賛する声もよく耳にするが、それもちょっと考えてみる必要がありそうだ。貧困、格差、就職難、自殺など、日本以上に問題が山積している韓国社会で、直接生活に関わらないコンテンツ分野にカネがつぎ込まれることに対して、韓国の人々の反応はいかなるものなのだろうか。自分たちの文化的自尊心が充たされて満足できるものなのだろうか。このように、クールジャパンが韓流をモデルとするにしても、その前に検証すべき点は非常に多いように思われる。
スポンサーサイト


コメント
コメントの投稿










トラックバック
トラックバックURL
→http://obagoro.blog.fc2.com/tb.php/38-848ebe46
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

大場吾郎

Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
Twitter:@obagoro

obagoro's books
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。