地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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21:32:18
 4月初頭といえば、進学や就職などで新しい生活を始める若者が多い時期である。同時に、「大学生(社会人)になったんだから…」と新たに何かを始める人も多く、各種サービスの契約件数に大きな変動が出やすい時期でもある。昨年秋、NetflixやAmazonプライムビデオなど、海外の主要な有料動画配信サービスの日本進出が相次ぎ、また、民放各局もコンテンツ配信に積極的な姿勢を見せ始めている中で、有料動画配信サービスの契約件数も増加が期待されるのではないだろうか。
 ネットでの動画視聴に関しては、昨年の電通総研の「動画視聴に関するWEB調査」やNHK放送文化研究所の「日本人とテレビ2015」の結果から、特に若年層に完全に定着していることは明らかだ。一方、有料の動画視聴となると、昨年秋のニールセンの調査では無料のものに利用者数で大きく水をあけられていた。アメリカでは、それまでのテレビ視聴の基本だったケーブルテレビ契約経験がない若者(いわゆるcord nevers)が、同じカネを払うならリーズナブルなNetflixなどの動画配信サービスを選んだと言われるが、それとはメディア環境が異なる日本の若者のどれくらいが有料動画配信サービスに関心を持ち、また、実際に契約しているのかはよくわからない。Youtubeやニコ動を延々と見ているような若者に果たしてNetflixやHuluは魅力的なサービスとして映っているのだろうか。
 一方で、アメリカであれ日本であれ、有料動画配信サービスにとって最も取り込まなければいけない層が当然、若年層であることは間違いない。テレビとともに育ってきた中高年が今でも比較的よくテレビを見ているように、メディア利用はコーホート効果の影響を受けやすい。有料動画配信サービスの契約の伸びが期待できそうなこの時期に、デジタルネイティブで、今後もネットでの動画視聴に愛着を持ち続ける可能性が高い若年層を取り込めていないとすれば問題である。
 実際のところ、重要な潜在市場である大学生たちの有料動画配信サービスに対する態度はどのようなものだろうか。以下では私が勤務する大学の学生を対象に行った調査結果を参考にしつつ、考えてみたい。回答者の属性は、関西の中規模私大でメディア系の講義を受講していた2年生以上のうちの希望者で、質問票の回収は206(男116、女90)だった。回答した学生にはインセンティブとして成績評価への加点を行っている。地方大学でメディア関連の講義を受けている学生が回答者であり、便宜的なサンプルから得られたデータなので、日本の大学生に一般化するのは困難である点は留意したい。
 まず、代表的な有料動画配信サービスとして選んだNetflix、Hulu、Amazonプライムビデオ、dTV、U-Nextのうちのどれかと実際に契約しているか尋ねた。下の図1にあるように契約者は少なく、206人中18人(8.7%)に過ぎなかったが、2つのサービスと契約している学生が2人いた(2人ともAmazonプライムビデオとdTVの併用)。

図1

 次に、未契約者188人を対象に、契約しない理由として考えられる選択肢の中から最大3つまで選ばせたところ、図2にあるように、圧倒的に多かったのは「無料動画サービスで十分」(122人)というものだった。「動画は無料で楽しめているから、別にカネ払ってまでは見たくない」というのは、Youtubeやニコ動慣れした日本の若者らしい。多くの大学生にとって「コンテンツ視聴は無料で楽しむモノ」というのが基本になっているようでもある。また、無料動画サイトには違法にアップロードされた動画が存在することは多くが知っているだろうが、「違法だから視聴をやめよう」という人は少ないだろうし、いわんや「カネを払ってでも違法じゃないコンテンツを見よう」などという殊勝な人はもっと少ないだろう。

図2

 次点は「カネがない」(78人)という、ある意味で大学生らしい理由だった。契約者も含めて、「月にいくらくらいなら動画配信サービスに払ってもよいか」尋ねたところ、下の図3にあるように、多かったのは「500円程度」(63人)や「1,000円程度」(39人)だった。実際にはdTVは月額500円だし、Amazonプライムビデオは年会費3,900円だから均等割りすれば月325円で、彼・彼女らの支払い希望額内に収まる。現実に動画配信サービスがいくらで提供されているのか知られていないように感じられたが、それは調べればすぐにわかる。結局は相場価格、さらにはサービスに対する関心の低さの現れとも考えられる。先に見たように、サービスに契約しない理由として「カネがない」を挙げるものは多かった。月に100円から300円くらいであれば、多くの大学生が躊躇いなく払える額だとは思うが、仮にそれくらいの額で提供されるサービスがあったとしても、そもそもサービス自体に関心がないのであれば、契約には結びつかないだろう。そう考えると、大学生にとって動画配信サービスは廉価だからという理由で契約するというものではないのかもしれない。

図3

 図2に戻って、契約しない理由の3位は「テレビ放送で十分」(50)、4位は「契約しても見る時間がない」(43)だった。若者のテレビ離れが指摘されて久しいが、「テレビ視聴時間」と「テレビ視聴の好意度」を尋ねてみると、学校やバイト、遊びなどに忙しい中で164人(80%)が1日1~3時間はテレビを見ており、156人(75.7%)がテレビ視聴に「すごく好き」、「好き」と好意的だった(図4・5参照)。メディア利用とは突き詰めて言えばカネと時間の消費であり、そこから得られそうな効用を加味して決められることが多い。今回の調査対象である大学生の多くは無料でそれなりに楽しめ、時間潰しにもなるテレビ視聴にはある程度満足しており、それに無料動画の視聴を合わせればもう腹いっぱいで、それ以上は「見る時間もないしカネの無駄かな…」という考えに至るのかもしれない。

図4

図5

 契約しない理由の5位以降も興味深いが、長くなるので次回のエントリーで考察する。
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大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
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