地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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21:30:04
 前回のエントリーで、私が勤務する大学の学生を対象に行った有料動画配信サービスに関する調査の結果を紹介した。206人中188人が契約していないことがわかったが、未契約の理由は多岐にわたっていた(図2参照)。前回に引き続き、今回は理由の5位となっていた「レンタルビデオで十分」(37人)を考えてみたい。

図2

 有料動画配信サービスはアメリカではケーブルテレビなどの有料テレビ離れを引き起こし、日本ではテレビ離れの誘因となりうる可能性が指摘されるが、より代替的な関係にあるのはレンタルビデオサービスであると考えられる。例えば、元々NetflixはレンタルDVD業者で宅配を売りにしていたが、2007年にネット配信を始めた。それ以降、契約者数は急増し、結果的に街のレンタルビデオ業は打撃を受け、一時は全米の至る所で店舗を見かけた最大手のBlockbusterは2010年に倒産に追い込まれている。2013年から14年にかけて住んでいたニューヨークではレンタルビデオ店を見かけた記憶はなく、スーパーマーケットの一角にDVDレンタル機のようなものがあったことを覚えている。
 私は有料動画配信サービスの話をする時、レンタルビデオ業を引き合いに出すことが多いのだが、両者を比較した場合、前者の優位点はいくつも述べられるのに対して、後者の優位点はなかなか思いつかない。せいぜい「パッケージを手に取れる」とか「店の雰囲気が好き」、「店員と話せる」くらいだろうか。いずれにせよ、前時代的なサービスと言う印象は拭えない。
 ところが、上記のような「レンタルビデオで十分」という意見にも見られるように、私が日々接している大学生にはレンタルビデオユーザーが多い。実際に今回の調査への回答者206人中153人(74.3%)がレンタルビデオの会員であり、有料動画配信サービス契約者(206人中18人、8.7%)とは比較にならないくらい多いことがわかる。有料動画配信の契約に「カネも時間もないし…」といった態度をとる一方で、レンタルビデオの会員ではあるというのはなかなか不思議ではある。下の図6にある通り、レンタルビデオ会員の利用頻度は数か月に1回が63人(41.2%)、月に1~数回が56人(36.6%)で大部分を占め、多くはそれほどヘビーユーザーというわけではなさそうではあるが、レンタルビデオは大学生にそこそこ浸透していると言えるだろう。

図6

 果たして彼・彼女たちはレンタルビデオに対して不満はないのだろうか。不満として考えられそうな選択肢から最大2つまで選ばせたところ、圧倒的に多かったのは「店へ行くのが面倒」で126人、次いで「借りている期間内に見なければならない」(82人)、「家から遠い」(53人)、「貸し出し中であることが多い」(31人)と続いた(図7参照)。言うまでもなく、家に居ながらにして楽しめ、自分のペースで視聴できる有料動画配信であれば、それらの不満は全て解消される。こういった点を私が講義などで指摘すると、少なくない学生が「言われてみればそうだ」といったような感想を述べる。有料動画配信サービスのレンタルビデオに対する優位点が彼・彼女らにほとんど伝わっていないということである。

図7

 意外だったのは、レンタルビデオに対する不満として「料金が高い」を挙げたのは22人だったことである。実際に私の勤務する大学の近所のレンタルビデオ店の料金体系を見てみると、新作が2泊で200円、旧作が7泊で180円となっている。都度課金なので利用頻度によってはそれなりの出費にもなりそうであるし、返却が遅れれば延滞金も発生するわけだが、多くの学生には必ずしも高いとは思われていない。有料動画配信サービスの未契約理由として「カネがない」を挙げた学生が180人中78人いたことを併せ考えると、彼・彼女たちの価値観や金銭感覚がよくわからなくなるが、レンタルビデオの利用に対して慣性が作用し、スイッチを阻害しているのかもしれない。
 大学生という潜在市場を開拓するためには、多くに利用されているレンタルビデオから有料動画配信サービスへのスイッチを促すことは重要だと思うが、相対的な利便性の高さやコストパフォーマンスの高さを強調するプロモーションはあまり行われていないか、行われていても、ターゲットにきちんとリーチしていない可能性がある。
 次回のエントリーでは、契約しない理由6位の「よくわからない」、「興味がない」を考察してみたい。
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Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
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