地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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21:38:56
 前々回、そして前回のエントリーで、私が勤務する大学の学生を対象に行った有料動画配信サービスに関する調査結果を紹介してきた。大多数の学生がサービスに契約しておらず、下の図2にあるとおり、その理由は様々であるが、今回は未契約の理由として同数6位(31人)である「よくわからない」と「興味がない」、7位(19人)の「見たいコンテンツがない」に関連して思うところを記す。

図2

 ある有料動画配信サービスがあるとして、詳細はともかく、少なくとも認知されていることが、ユーザーに選ばれる上での必要条件であることは言うまでもない。206人の学生にNetflix、Hulu、Amazonプライムビデオ、dTV、U-Nextをそれぞれ知っているか尋ねたところ、最も知られていたのはHuluで147人(71.4%)が「知っている」と答え、次いでdTV(130人、63.1%)だった(図8参照)。なぜそれらを知っているのかは問うていないが、HuluはTV CMなどの広告、dTVはNTTドコモとの連動で見聞きする機会が多いことが影響しているのかもしれない。

図8

 一方、HuluやdTVに比べるとNetflixは知られておらず、56人(27.1%)どまりだった。Netflixが日本への上陸を発表してから1年あまり、そして、実際にサービスを開始してから7ヵ月が経った。その間、Netflixは常に有料動画配信サービスの話題の中心だった感があるが、実は「黒船襲来」と大騒ぎし、その動向に目を光らせてきたのはメディア関係者、それにイノベーターやアーリーアダプターと分類される先駆的な消費者がほとんどで、それ以外の人々は依然としてキャズムの向こう側にいるどころか、Netflixを知りもしないのではないかという気もしてくる。
 それにしても、前々回のエントリーで見たように、経済的・時間的制約の中でNetflixと契約している大学生が多くないことは予想できたものの、知名度の低さは意外な感じがした。Netflixは彼・彼女らの情報アンテナには引っかからないということだろうか。いずれにせよ、このままでは彼・彼女らが有料動画配信サービスの契約を検討する時が来ても、Netflixというブランドは想起されないため選択肢にならず、HuluやdTVと比較・検討されることすらない可能性もある。
 続いて206人の学生にNetflix、Hulu、Amazonプライムビデオ、dTV、U-Nextの中で関心があるものを複数回答可で尋ねた。最も関心が高かったのは、Huluの72人(35%)で、以下にdTV(28人、13.6%)、Netflix(22人、10.7%)、Amazonプライムビデオ(21人、10.2%)と続いた(図9参照)。認知している学生の数同様、関心がある学生の数でもHuluが他を凌駕しており、知っている学生たちの間での関心度(関心者数/認知者数)も49%と高い。一方、dTVは関心度が21.5%で、比較的知られている割には関心を持たれていない印象を受けた。

図9

 Netflixは先述の通り、あまり認知されていないものの、認知している学生に関心を持たれている割合(39.3%)はHuluに次いで高かった。より多くの学生に知られるようになれば関心度もさらに上がるのか、あるいは、関心を持ちそうな学生の多くには既に一通り知られているので関心度の伸びは期待できないのかは興味深いが、現在のNetflixのコンテンツを考えると、後者の可能性も否定できないと思う。
 Netflixは多様なコンテンツを揃えてはいるが、なんといっても白眉はオリジナルコンテンツだろう。その代表格である”House of Cards”や”Orange is the New Black”には私もハマったが、同時に、それらの作品はアメリカの社会なり文化なりにある程度通じていないと、その価値を十分に享受できないようにも思えた。文化的割引(Cultural Discount)が作用するのである。Netflixは積極的にグローバル展開を進めているが、オリジナルコンテンツに関してはアメリカ国内で受けることを最優先に作られているような印象を受ける。逆に、世界中で受けることを狙って作ったら、あれほど濃い内容のものは作れないだろう。私見ではあるが、それゆえに、海外市場重視で普遍性追求と引き換えにアメリカ人のツボを忘れつつあるハリウッドの大作映画や、放送コードでがんじがらめのテレビシリーズに不満を感じていた人々に熱烈に支持されたという面は確かにあると思われる。
 一方、今回の調査に参加した学生のコンテンツ嗜好を知るため、好きなテレビ番組のジャンルを尋ねると、人気が高かった順にアニメ(73人)、バラエティ番組(57人)、音楽番組(45人)となった(図10参照)。多くの学生にとってはアニメと言ってもオタク受けする深夜アニメ、音楽と言っても聴くのはJ-POPばかりというように、(日本の)という但し書きが付くと考えていいだろうし、お笑い芸人によるトーク中心のバラエティ番組に至ってはドメスティック・コンテンツの極みである。

図10

 「今の若者は内向き志向で、海外に興味がない」という紋切り型の批判には全く与するつもりはないが、日々大学生と接していて、ことコンテンツ消費に関しては日本のモノばかりを好んでいるように感じられるのは事実だ(まあ、それだけ日本のコンテンツが彼・彼女らに訴求するようにうまく作られていることの証左だとも思うが)。日本のアニメやお笑い好きの大学生はNetflixのオリジナルコンテンツに魅力を感じるだろうか。あまり親和性は高くなさそうというのが私の見立てだが、あくまで憶測の域を出ないので、一度試写でもやって感想を聞いてみたい。
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Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
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