地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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22:00:57
 僕が先日上梓した『韓国で日本のテレビ番組はどう見られているのか』に関して色々とありがたい感想を頂いている。この本の中で、韓国で日本のテレビ番組が放送されない諸要因を考察しているが、意外と読者の方の反応が大きいのは、日本のテレビ番組の海外販売に関する章(8章「日本のテレビ番組の国際競争力と今後の展開」)だ。わかりやすく言うと、日本のテレビ番組は海外販売に係る費用が高く、価格競争力を持たない点や、完全に日本国内市場向けであり、海外市場には向いていない点、つまりガラパゴス化しているという点である。これらは何も韓国に対してだけでなく、その他の国に販売する際にもマイナス要因となる。多少の自負心を込めて言うならば、実はこのことをきちんと解説している書籍が日本にはほとんどなく、そこで「ないならば自分でやってやろう」と考えた次第である。
 そもそも日本の国内テレビ放送市場は世界第2位の規模を誇り、内需だけで十分に食べていけるという考え方がこれまでずっと一般的だった。つまり、テレビ局は海外に目を向ける必要がなかったのである。そして、今でもそんな風に考えている人は業界に少なくないと思われる。業種によって国際性みたいなのを測ると、恐らく放送業界はかなり低いはずだ。
 一方で1990年代半ばから、台湾や香港、シンガポールなどで日本のドラマやバラエティ番組が人気となった。これにしても、別に日本のテレビ局が必死に売り込んだわけではなくて、むしろ大した努力しないでも先方で人気が高まり、買いが入ったという、商売をする立場からすれば夢のような話だったのである。おまけにその当時は現在ほど権利処理に厳密ではなかったため、今より海外に番組を売りやすかった。
 ところが、そんな中で権利者(しかもテレビ番組の場合、膨大な数に及ぶ)が厳密な権利処理を主張するようになってきた。それをきちんと処理すれば時間もカネもかかるが、その割に利益は少ないため、テレビ局が海外番組販売に消極的なるのは当然である。逆に十分な利益を確保しようとすれば、販売価格は高騰し、買う側が「日本の番組は欲しいが、そんなに高いカネは出せない」となる。結果として、アジア各国から日本のテレビ番組は潮が引くようにスーッと消えた。そして、この状態が基本的には現在も続いている。世界各国で多チャンネル化が進み、どこでもコンテンツが求められているのに、日本のテレビ番組は主要コンテンツになっていない(アニメは除く)。
 「テレビ番組は日本の大衆文化を伝える役割を担うのだから、海外に出ていかなければならない」という主張は確かに理想的だが、「テレビ番組の海外販売は基本的にテレビ局が採算性に基づいて行う」という現実を全く見ていない。文化事業の一環として海外番組販売を行うテレビ局など、比較的体力があった頃ならともかく、各局とも経営が厳しい今日では存在しないだろう。そして、テレビ局が番組を売れないのならば、少なくとも正規の番組の国際交易は起こりえない。テレビ局は儲かればやるし、儲からないならやらないわけで、海外番販に積極的でないのは、儲からないからである。しかも、かつてと違い、儲からない割に面倒くさい。
 実は僕はかつてアメリカの大学院で映像コンテンツのマルチユースを専門的に学んでいた。アメリカのテレビ番組は、日本以上に巨大なアメリカ国内市場で十分な利益を稼ぐことができるが、海外市場にも盛んに輸出されている。それはなぜかというと、海外に売る際の権利処理が簡素化されており、多くの場合、制作プロダクションが唯一のコンテンツホルダーとして自由に番組を運用できるからである。また、日本やアメリカと違い、韓国の場合は国内市場が小さいため、どうしても海外市場に出さなければならないが、それにしても多くの場合、テレビ局の自由裁量で行える部分は大きい。アメリカにせよ韓国にせよ、番組の流通を前提とした制度作りがなされているのである。翻って、日本の状況を一見すると、確かに権利処理の複雑さは否めない。(続く)
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大場吾郎

Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
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