地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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22:37:07
 Youtubeなど動画サイトにテレビ番組が違法にアップロードされているのは、もはやお馴染みの風景だ。「なぜ日本のテレビ番組はネットで流れないのか」ということが議論されて久しく、その理由としては「正式にネットで流すには権利関係が複雑らしい」ということが盛んに喧伝されてきた。テレビ番組を海外に売るのも同じことだ。放送用の番組を放送以外で利用するためには、それがネット配信であろうが、海外番販であろうが、新たに処理しなければならないことが多いのである。
 それで「著作権」という話になるのだが、実は著作権の処理に関して言うと、結構制度化されている。作家とか脚本家とか音楽著作権などに関しては、それぞれの団体があり、著作権を集中管理している。また、利用申請に対しては応諾義務があるから、よほどのことがない限り、ダメ出しされることはない。使用料も規定通り払うだけである。巷でよく言われるような「著作権処理=煩雑」な感じはしない。
 実のところ、面倒くさいのは著作権ではなく、「著作隣接権」というあまり聞きなれない権利である。これを所有している権利者はいくつかに大別される。1つは出演者などの「実演家」である。勘違いされやすい点だが、実演家は著作権を持っていない。それじゃあんまりだということで、著作隣接権が認められているわけだが、これは上記のように権利者団体が集中管理を行っているわけではない。「昔の作品で、出演者の誰々と連絡がつかないから許可の取りようがない」といった話はここから出てくる。しかも応諾義務があるわけではない。「昔出演した作品を今さら公表してほしくない」という理由で使用申請を拒否されることもある。従って、ここをクリアできるかは、実演家(あるいは彼らの所属事務所)の一存である。
 著作隣接権に関して、もう1つの有力な権利者は、レコードCDなどの「原盤製作者」である。ここのところは一般視聴者には非常に理解しづらい。ただ、注意して番組を見ると、番組内で随分多くの曲が使われているのに気づくはずだ。そして、その多くは生演奏ではなく、CDやレコードなど録音された音源を使用している。この音源を作った人が原盤製作者である。つまり、番組で使われる曲を作った人ではなく、番組で使われる曲が収録されたアルバムを製作した人や団体(多くの場合はレコード会社や音楽出版社)である。通常の番組放送における原盤使用は、原盤権の権利者団体と包括契約されているが、番組を海外に売る際には、番組内使用楽曲1曲1曲の原盤製作者を探し、許可してもらわなければならない。これが面倒くさい。
 でも、レコード会社なんてそれほど多くないのだから、やってできないことはなさそうな感じもする。確かに「邦楽」に関してはその通りかもしれない。厄介なのは「洋楽」であるが、その洋楽の音源が日本の番組内では実によく使われている。映画のテーマソングなんか本当に多様されている。これらの原盤権は海外の会社が持っているような場合が多く、そことの交渉となる。信じられないくらい高額な使用料を要求されることもあるという。
 僕は「日本のテレビ番組の海外販売を妨げる権利処理とは、具体的に何か」という質問をこれまで多くのテレビ局の海外番販担当者にしてきた。その時に本当に多く聞かれる答えが、著作権でもなく、出演者の権利でもなく、この洋楽の原盤権だった。ちょっと信じにくい話ではないだろうか(僕は最初聞いた時、椅子からずり落ちそうになった)。番組内で使われているBGMのおかげで、その番組を海外に売れないのである。率直に言って、番組のBGMは脚本や出演者と比べた場合、番組における重要度ははるかに低いはずだ。そんなもののために海外販売が見送られることが多いとは…。
 ただし、ここまで書いてきた権利処理であるが、使用料を支払うことでクリアになるケースも多い。しかし、前回記したように、権利処理の経済的コストを販売価格に上乗せすれば、値段は跳ね上がり、買い手がいなくなる。逆に薄利で売るには、権利処理には労力がかかり過ぎる。結果的にテレビ局では、「そこまでして海外販売しなくていいんじゃない?」という意見が大勢を占めるようになる。海外販売が儲かるならテレビ局は積極的に取り組むだろうし、逆にやらないのは、儲かりそうもないからだ。ちなみに著作隣接権は、アメリカにはそもそも存在せず、韓国でも実演家には与えられないことが一般的だ。(続く)
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大場吾郎

Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
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