地殻変動が起きているメディア環境を観察し、そこで流通するコンテンツを批評
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21:40:40
 週末に情報通信学会主催のフォーラムがあったので行ってきた。「クールジャパン 放送番組・海外展開の新時代」と題されたもので、1部は「最新の中国ネット映像配信事情」、2部は「海外番組展開」がテーマだった。
 一般に「クールジャパン」は日本製コンテンツ全般を指すと考えられるが、実質的にはアニメ・漫画・ゲーム、せいぜいJ-POPや邦画までで、その対象にテレビ番組が含まれることは珍しい。ドラマやバラエティ番組などは、恐らく日本国内では最も人気が高いジャンルだが、国際競争力は低い。海外市場での人気・需要が低いわけではないと思うが(事実、動画の違法流通はすごい)、実績には結びついておらず、クールジャパンを推進する経済産業省の構想からもテレビ番組は抜け落ちていることが多い。
 なぜテレビ番組の海外展開がうまくいかないのか。この点に関しては、これまで結構多く語られてきたし、僕もちょこちょこ書いたりしてきた(ご関心があれば、弊ブログの過去のエントリー「海外に売れない日本のテレビ番組①~④」をご覧ください)。今回のフォーラムでもテレビ番組の海外流通の阻害要因が相変わらず指摘されていた。もう何年も前から指摘されている問題点が改善されないということは、改善できないのか、それとも改善する気がないのか…そのどちらかと捉えられても不思議ではない。
 ただ、そんな中で、ちょっと面白いやりとりがあった。フロアの聴衆から「テレビ局は国内の視聴率競争にだけ明け暮れ、海外市場を見ていないのではないか」という趣旨の意見が出された。これまでそういった傾向があったことは否定できない。キー局をはじめとするテレビ局は世界第2位のテレビ市場を背景に、内需だけで十分すぎる利益を上げてきた。売り上げの1%にも満たないような海外ビジネスに注力する必然性や動機がなかったのである。
 この発言を受け、日本テレビで番組海外販売に携わる君嶋由紀子さんが、最近は番組制作者の意識に変化が生じていて、プロデューサーやディレクターが「番組を海外に出したい」と相談してくると述べた。これが本当だとしたら、確かに変動が起きつつあると言える。これまでのように既存の番組の2次利用の1つとして海外に出すというよりは、最初からある程度、海外市場を視野に入れた番組作りをすることを含んでいると思われるのだから。
 テレビ番組の海外での販売不振は、輸出先である現地市場の事情(例えば規制など)を除けば、実は日本のテレビ番組の作り自体に起因するものも多いと考えられる。例えば、音楽原盤権処理の問題などは、番組BGMで洋楽を使わないとか、MAと呼ばれる音処理終了後もマルチトラックテープを残すなどしておけば、かなりの部分が回避できる問題である(専門的な話だが、細かく説明し始めると相当な字数が必要になるので、ここでは省略する)。つまり、番組制作者であるプロデューサーとかディレクターの裁量でどうにでもなる問題のはずであり、今までそれをやってこなかっただけなのだ。
 あともう一点、よく指摘されるドラマ話数の問題がある。日本のドラマの標準である1クール全11~12話では話数が少なすぎて、海外の買い手が嫌がるという話だ。平日に1話ずつ放送すると2週間ちょっとで終わってしまい、視聴習慣がつきにくく、スポンサーも嫌がる。しかし、海外標準に合わせて話数を増やすというのは、日本の放送習慣を変えることでもあり、ハードルは高い。
 ただ一方で、あまり紹介されないが、以下のような声もある。日本以外の国の視聴者(特に若い視聴者)にとってドラマはネット配信を見ることが定着しつつあるが、この場合、話数が11~12話というのは、数日で一気に見てしまうのにちょうどいい量である。また、日本のドラマはストーリーが凝縮されているのに対し、逆に他国のものはダラダラと話数だけが多くて、中弛みしているものも多いと言われている。つまり、「ドラマ話数が少ないこと」は、買い手である現地放送局には嫌がられるかもしれないが、現地視聴者の受けは悪くないのである。
 これらのことを考慮すれば、各国の動画サイトに正式にコンテンツを提供していくことが、実は日本のテレビ番組の海外展開にとっては活路を見出す上で必然であるような気がする。しかも、日本のドラマの多くは若い視聴者をターゲットに作られており、この点からもネット配信との親和性は高いはずだ。各国の放送事業者に数回の放映権だけを売るといった従来のビジネスからの脱却し、ネット配信へシフトチェンジして行くという、これまでの弱点を逆手に取るようなビジネス・スキームの転換が望まれるはずだが、そのようなビジョンを日本の放送事業者から聞くことはあまりない。
 それについては、きっと販売する側にも、権利処理が複雑とか、海外のネット事業者に売っても儲けにならないとか、違法流通が増えるだけだとか、諸般の事情があるのだと思う。権利に関しては、今や他国ではオールライツ(放送だけでなく、ネットなどその他のメディアでの流通も可能な包括的契約)が常識となっている。それができないのならば、上記の理由により、せめて放映権よりもネット権を優先した方が良いのではないかと思う。収益性については、具体的な数字のデータがないので何とも言えないが、現実的にはここがネックのような気がする。ただ、これまでの放映権販売と異なり、非独占ライセンスとなるだろうから、薄利多売によって利益最大化を目指すということになる(テレビ局と薄利多売って似合わない気もするが…)。最後に、違法流通だが、正規版を出せば、ライセンシーである現地市場の動画配信事業者も自社の利権に絡む問題なので、違法動画サイト対策に乗り出すだろう。これまでのように、日本のテレビ局が徒手空拳で海外市場の違法流通撲滅に立ち向かうよりは、はるかに効果的なのではないだろうか。
 国内でも進展しない番組のネット配信を海外で行えるのかという疑問があるが、実際にそういったケースは少しずつ出始めている。その中から成功例が出れば、「海外はネット配信で」が1つのビジネスモデルになる可能性はある。

20:32:34
 先週、総務省でコンテンツ振興関連のヒアリングを行ってきた。今年3月に発足したコンテンツ海外展開協議会が8月に報告書を出したばかりなので、現状を体系的に理解するには良い機会だった。
 既存のテレビ番組の海外販売が相変わらずパッとしない点は今更ここで強調する必要はないだろう。原因が何かという点もハッキリしている。ご存じでなければ、弊ブログの過去のエントリーをご覧頂ければ幸いである(「海外に売れない日本のテレビ番組①~儲けにならない海外市場」以下4篇)。ただ問題は、権利処理の問題であれ、違法動画の流通であれ、不振の原因が2000年代初頭から指摘されているのに、それらを改善できない点にある。関係省庁は施策を案じてはいるし、実際に対策に乗り出している部分もあるが、これだけ時間をかけても効果がはっきりと出てないところを目の当たりにすると、それらの問題点が構造的に根深いものであると同時に、テレビ番組の海外展開は大きな方向転換も必要なのではないかという気になる。つまりドラマであれ、バラエティ番組であれ、日本で放送したものを海外市場に売るという、従来の番組販売方法、大した成功につながらないビジネスモデルの見直しである。
 新たな取り組みの1つは、これも以前のエントリーで書いたが、番組フォーマットの販売である(「日本のバラエティ企画、海を超える!?」)。フォーマット販売に関しては、企画力があり、マス向けコンテンツを制作するノウハウを持つキー局が主に考えていかねばならない部分だろう。ただし、あくまで民間ベースの事業であり、官が入り込む余地は少ない。
 もう1つは、ローカル局や制作会社が海外向けの番組(地域コンテンツ)を作り、海外市場で展開していくというものである。番組内容は地域の活性化を目指すものであり、観光をアピールするものが中心になる。一番有名なのは(といっても日本国内ではほとんど目にする機会がないので、日本人視聴者には馴染みないものだが)、北海道テレビが制作している『北海道アワー』という東アジアを中心に放送されている番組で、実に15年の歴史を持つ。実際に放送を続ける中で、台湾からの観光客が増えたそうだ。その番組を1つのモデルとして、全国各地の他のローカル局も「自分たちも何かできないか」と考え始めているという。
 このような地域コンテンツのメリットはいくつか考えられる。まずは、ローカル局にとって番組・カネ両方におけるキー局への依存が高まる中、このような独自のビジネスを展開することが評価に値する。次に、観光客を呼びこむ、いわゆるインバウンド効果が期待できる。名産品や食などとの連携も可能だろう。また、比較的廉価でコンテンツを制作・運用できる点も重要だ。地場産業の協力があれば、コストダウンにつながる部分もあるだろうし、あくまで海外市場向けに作っているのだから、従来の海外番組販売に比べて権利処理の煩雑さも回避できそうだ。
 ただし、現時点では課題も多い。まずは、地域コンテンツのコンテンツとして特性が挙げられる。「コンテンツを利用した観光促進」として思い浮かぶのは映画やドラマ、アニメなどのロケ現場である。それらのコンテンツではストーリーが展開する中で、その舞台となる街が魅力的に描かれているから、人々はロケ地巡りやアニメにおける聖地巡礼に憧れるのである。そういったコンテクストが存在しない観光紹介番組で、ロケーションはどれだけ人々に訴える力を持つのだろうか。例えは悪くなるかもしれないが、人気のある俳優が映画やドラマの魅力的なコンテクストの中で使うグッズだから、観客や視聴者の中にはそれを買いたいと思う人がいるわけであって、同じグッズでもそれを売るための通信販売番組で紹介されれば訴求力はぐっと落ちるのではないかと思うのである。
 あと地域コンテンツを制作するといっても、ローカル局によって(厳密には、その局の後背地域によって)観光資源には差がある。北海道や関西のテレビ局であれば名所史跡・文化・自然なども豊富だろうが、もっと小規模な県の放送局であれば、一体何を取り上げれば良いのやらという話になっても不思議ではない。
 次に、地域コンテンツを流すチャンネルの問題がある。外国の地上波放送で、日本の一地方を紹介する番組が放送されることは難しく、従ってケーブルチャンネルや衛星放送が主なアウトレットになる。アジアには日本の文化を紹介する専門チャンネルが存在する国もあるが、それにしてもコンテンツを露出する場は相当限られてしまう。チャンネルが確保できないと継続的にコンテンツを発信することができないので、この部分は総務省が支援しているのが現状だ。
 そもそも地域コンテンツはどうやってマネタイズできるのかという問題もある。リーチの小さいアウトレットでやっている以上、大きなビジネスにはなりにくい。それでも観光業など周辺産業は海外市場の顧客を獲得するためのツールとしてコンテンツを捉えられるだろうが、ローカル局にとってはコンテンツの売上がすべてだ。もちろん「儲からなくても地域のためにやる」という姿勢があれば素晴らしいが、民間放送である以上、当然ながら採算ベースで考えざるをえないのではないか。
 恐らく地域コンテンツの場合、コンテンツ自体がカネを稼ぐというよりも、コンテンツで関連産業がカネを稼ぐことを目標としている。その意味では経済波及効果を期待しているわけだが、今一つの問題点として、プロダクトプレイスメントをはじめとして、コンテンツ露出の周辺産業への効果は非常に測定が難しい点が挙げられる。前述のとおり、『北海道アワー』によって台湾から観光客が増えたというが、実際に番組視聴との相関はどれくらいなのだろうか。北海道を訪れた要因が件の番組視聴だけとは考えにくいが、あまり他の諸要因と比較検討されているわけでもなさそうだ。このように効果をはっきり数値で表すことが難しいからこそ、行政支援を求める声の高まりとは裏腹に、コンテンツ振興関連事業は仕分けや予算削減の対象になりがちなのであろう。

20:56:19
 日本のバラエティ番組の海外展開の方法として、話題になることも多いフォーマット販売だが、国が支援に乗り出すようだ(http://eiga.com/news/20120911/14/)。ところで、そもそも番組フォーマット販売とは何か。ちなみに僕は著書『韓国で日本のテレビ番組はどう見られているのか』の第6章「バラエティ番組:パクリとフォーマット販売」で、相当ページを割いてフォーマット販売を説明しているので、関心ある方はそちらもご覧頂きたい。多分、日本の図書文献の中でフォーマット販売をここまで細かく説明しているものはないと自負している。話を戻すが、テレビ番組のフォーマット販売とは、ある番組のコンセプトや構成、演出方法などをパッケージ化し、1つの権利(フォーマット権)として海外市場の番組制作者に販売することである。
 世界的に有名な番組フォーマット販売の代表作としては、イギリスの番組プロダクションが開発した『Who Wants to Be a Millionaire?』が挙げられる。これは、世界の約70カ国へフォーマット販売され、各国版が制作された。面白いのは、国ごとに多少の違いは見られるものの、番組の進行やスタジオセット、音楽、照明、コンピューターシステムに至るまで、概ね世界的に統一されている点だ。日本ではフジテレビがフォーマットを購入し、日本版である『クイズ$ミリオネア』が制作・放送されたことを覚えている人も多いだろう。僕は日本版、アメリカ版、あと映画『スラムドッグ・ミリオネア』でインド版を見たが、確かに出演者や言語以外は統一されている印象を受けた。
 一方、日本の番組のフォーマットが海外に売られることもある。この分野はTBSが一生懸命やっていて、『風雲!たけし城』や『SASUKE』は100か国以上に番組フォーマットが販売されている。あと、フジテレビの『料理の鉄人』は当初、アメリカで日本版が放送されていたが、反響が大きかったためアメリカ現地版を作り始めた。こちらもアメリカに暮らしていた時に見たが、廉価版コピーみたいなイマイチな出来で、全体的にそれほどオリジナルに忠実な感じでもなかったと記憶している。
 さて、番組フォーマット販売の長所とは何だろうか。まず、既に完成した番組を海外へ輸出販売するのと違って、権利処理が楽な点が挙げられる。かつての記事(「海外に売れない日本の番組」)でも書いたように、日本の番組は海外販売に際して、とにかく権利処理上の制約が多い。中でも権利処理の煩雑さと費用は頭が痛いところだが、フォーマット販売はコンセプトや企画を売るものなので、そういった部分に悩まずに済む。そしてもう1つ、言語や出演者、番組のディテールをそれぞれの国・市場に合わせて変更できる点も大きい。みのもんたさんが日本語でMCをやり、顔なじみのタレントらが出演する『クイズ・ミリオネア』だから日本の視聴者は見るのであって、それがイギリスのオリジナル版だったら、日本の視聴者への魅力はかなり割引されてしまう。また、売る側にしてみれば、一度フォーマットを売れば、買った側が番組を放送し続ける限り、定期的に収入が入ってくる点も大きい。
 では逆に、番組フォーマット販売の短所は何だろうか。まずは、フォーマット販売という形式自体に対する理解がまだまだ世界的に共有されていると言えない点が挙げられる。「フォーマット権」といっても、それは著作権のように法的に保護されるものではなく、フォーマット販売は、いわば売る側と買う側の間の契約に基づいた商取引である。ここで販売される番組の企画やコンセプトはそもそも著作権で守られるものではないため、これまでテレビ番組に関する剽窃や盗作、パクリの類の話は、噂レベルのものも含めて、本当に多かった。このようにパクれば無料で済むものに対して、きちんと契約をして、カネを払うのがフォーマット販売なのだが、パクリに慣れてしまっている制作者に受け入れられるだろうか。ただしこの点は、長年にわたって日本の番組のパクリが横行していた韓国でも最近はフォーマット契約を遵守するようになってきているというから、時間とともに慣習化するのかもしれない…と書いていたそばから、また韓国のパクリが発覚した(http://news.livedoor.com/article/detail/6936567/)。
 また、フォーマット販売の場合、買った側が自国市場に合わせて細部をローカライズするわけで、それが利点だと先に記したが、このことは、原産国のイメージが綺麗さっぱり消され、あたかも購入国のオリジナル制作番組のように見えることを意味する。このようなフォーマット販売の性質ゆえに、テレビ番組の国際流通を文化交流の一環として捉えようとした場合、そこにフォーマット販売された番組が寄与できる部分は実は少ない。例えば外国人が日本のドラマ視聴を通じて、日本文化や日本人的なものに触れることは可能だろうが、自国用に作り替えられたバラエティ番組を見て、そのようなものを感じることは難しい。
 あと、日本でいうところのバラエティ番組は多種多様で、「これがバラエティ番組だ」という定型を持たないが、フォーマット販売する場合には、実は企画によって売りやすい・売りにくいがあるように思える。例えば、『ミリオネア』の例からわかるように、クイズ番組はやりやすそうである。また、体を使ったチャレンジ系もフォーマット販売しやすそうだ。先の例でいうと、『風雲!たけし城』や『SASUKE』がこれに該当する。一方、今日主流となっている、スタジオに雛壇があって、芸人やタレントがトークを展開するバラエティ番組は難しいかもしれない。まず、一部の東アジア諸国を除いて、あのような番組スタイルはおそらく存在しないため、たとえ自国の芸能人を使ったとしても、出演者・視聴者ともに番組スタイルそのものに馴染めない。トークにおける笑いのツボが異文化環境では随分違う点も、負に働きそうだ。結局、番組の企画やコンセプトを売るとなった時に、やはり万国共通のわかりやすさ、特に見た目のわかりやすさは重要だと思われる。その意味でも、トーク中心の番組はやはりつらい。

22:55:45
 前回まで日本のテレビ番組の海外流通を阻害する要因として、テレビ局の海外番販へのモチベーションの低さとか権利処理とか日本の番組スタイルの独自性などに焦点を絞って記した。最後の点に関して、海外市場展開を視野に入れた番組作り(例えば、ドラマの話数を増やすとか、異文化でも理解しやすい内容にするとか、番組中の音楽使用を控えるとか…)をすべきと言う意見を耳にすることがあるが、制作側からすれば、我々日本の視聴者が長年にわたって慣れ親しんでいた番組様式を海外市場向けに変えることは容易ではない。場合によっては国内視聴者を失いかねない。
 この点は映像コンテンツの国際流通を考える際、実は非常に重要な点だ。よくハリウッド映画がグローバルな規模で受容される理由として、アメリカ人にしかわからないような要素や特定の文化的背景を持つ人たちが嫌がる要素を排除して、極端に言えば、世界中の最大公約数的観客が楽しめるような内容の作品づくりを意識的に行っているからと言われる。確かに世界各国で驚くべき興行収入を記録する類のアメリカ映画には、そのような普遍的内容を備えたものが多いのは事実だし、日本のアニメ『ポケットモンスター』が世界中で受容されるのも似たような理由からだろう。ここら辺りの話は弊著『グローバル・テレビネットワークとアジア市場』で詳しく論じているので、興味がある方はご一読頂ければと思う。
 ところが、テレビドラマやバラエティ番組の中でそのようなグローバルに受容されるコンテンツは本当に少ない。一般にテレビの娯楽番組は自分たちの文化を反映したものが好まれる傾向があるわけで、そのような個別の文化特性を強調すれば、国際流通は難しくなる可能性がある。恐らくアメリカのテレビ番組だって、少なくとも映画ほどには海外市場を意識して作られているわけではないだろう。また、韓国ドラマは海外市場を見据えて作られているとまことしやかに言われるが、この点も疑わしい。先日話したある関係者は、「日本があまりにも韓国ドラマを欲しがるから、最近は日本に売れそうな作品を作る動きが一部にないわけではないが、主流ではない」と話してくれた。どこの国も番組内容に関しては自国視聴者第一主義で作っていると言って間違いないだろう(国際流通のための制度作りはまた別の話)。
 一方で、先日「TBS、シンガポールのメディアコープ社と番組制作・EC事業の共同調査で合意」という記事を見つけた。実は昨今、こういった番組の国際共同制作の話が増えていて、特にアジア諸国の間では多い。今月初頭に福岡で行われていた「アジアドラマカンファレンス」でも実務者間の提携や協力が話し合われている。一昔前なら日本のテレビ局はまず積極的にはやりたがらなかったはずだ。日本のテレビ局にとってアジア諸国との合作は、少なくとも収益面において大きなプラスになるようには見えなかったのだから。
 しかし、日本のテレビ局やプロダクションがようやく海外市場に目を向け始めた今日では状況がちょっと違ってきている。特に共同制作であれば、作品にうまく日本と相手国のハイブリッド感を出すことで、両国を確実なマーケットとすることができる。コンテンツの運用にしても、映画によく見られるような製作委員会を国際的に組織すれば、様々なビジネス展開が期待できそうだ。
 ただ、実際の共同制作の現場からは様々な問題が聞こえてくる。双方の意見や利害が対立し、ピリピリした雰囲気になることもあるという。また、現実には対等な関係は難しく、どちらがイニシアチブをとるかで揉めることもある。しかも多くの場合、外国側が世界屈指のコンテンツ大国である日本側に求めるのは、制作ノウハウというよりは、脚本や企画といった部分の開発(あと資金も?)である。この点はドラマのリメイク権やバラエティ番組のフォーマット販売がビジネスとして成立している点からもうかがえる。脚本や企画は、一昔前であればパクればOKみたいな風潮もあったのだろうが、昨今ではどの国も著作権意識が高まったり、あるいは国際ビジネスにおける慣習に留意し始めている。外国側にすれば、日本のドラマの脚本やバラエティ番組の企画は国際的に高い評価を受けているから、その部分を正式に使用できるようにしたいわけであるが、その一方で出演者は自国の俳優やタレントを使いたがる。従って、表面上は純自国製コンテンツに見えなくもない。共同制作と言えば聞こえはいいが、実のところは、後で揉めないように契約だけして、脚本や企画など使いたい部分は正式に使わせてもらい、あとは好きに作らせてくれというふうに見えなくもない。
 それでも共同制作やリメイク権販売、フォーマット販売が既存の番組販売よりも収益性が高いならば、日本のテレビ局やプロダクションは乗り出すかもしれない。ただし、日本色が表面に出ないのであれば、コンテンツ視聴を通して日本に興味を持たせ、旅行に来たり、日本語を勉強したり、日本製品を買ったりする日本ファンを増やすという、経済産業省あたりが好きな波及効果も期待できない。また、テレビ番組の国際交易に関してよく唱えられる理想、つまり番組が日本と諸外国の相互理解と友好に貢献するという点も絵に描いた餅になってしまう。

22:52:34
 今回は日本のテレビ番組、ジャンル的にはドラマとバラエティ番組に見られる独特なスタイルや構成についてまとめてみる。簡潔に言えば、他国のドラマやバラエティ番組とは異なる点が散見され、そのことが海外展開を阻害するとも考えられる。もちろん、それらの点は日本の番組しか見ていないと気付きにくい点だが、それゆえに外国出身者にはよく指摘される点であり、「ここが変だよ、日本のテレビ番組」みたいな企画やれば必ず出てくる点だろう。日本で独自の進化を遂げるも国際競争力を欠いた日本製携帯電話を揶揄して「ガラパゴス化した携帯=ガラケー」と呼ぶことが一般化したが、テレビ番組も同様で、独自の進化を遂げる一方で、他国の番組の標準とはかけ離れた、いわば「ガラ番」と呼ぶにふさわしいものになってきている。
 まずはドラマだが、日本のドラマの話数はワンクール(3か月分、だいたい11~12話)が標準である。面白かろうが、つまらなかろうが、稀に途中打ち切りはあるものの、大体それくらいの量だ。それに比べると外国のドラマは概して話数が多い。拙著『韓国で日本のテレビ番組はどう見られているのか』にも書いたが、話数の多い・少ないに対する視聴者の反応は様々だ。日本のドラマは「終わるのが早すぎる」という声もあれば、「話が凝縮されていて良い」という意見もある。より話数が多い外国のドラマに対しては逆に、「だらだら話を引っ張り過ぎ」という声もある。ただし、視聴者ではなく、ドラマを購入して放送する側にとっては、話数は多い方が絶対にいい。仮に月曜~金曜の5日間で1話ずつ放送したなら、日本のドラマは3週間分もなく、視聴習慣が固定されてくる頃には、もうそのシリーズは終了となってしまう。買う側は概して、他の条件が同じならば、全12話のドラマ2シリーズよりは、全24話のドラマ1シリーズを好む傾向にある。
 日本のドラマの他の特徴は、テレビで人気がある芸能人(必ずしも俳優に非ず)を中心に作られている点であるが、そのために演技経験や演技力が不足したアイドル、タレント、歌手、芸人、元スポーツ選手などが重要な役柄を務める作品も少なくない。しかし、こういったドラマはそのアイドルや芸人を知っているから楽しめるのであり、その人たちを知らないと「なぜこんな下手な人が主役なんだ」と捉えられかねない。例えばアイドルを全面的にフューチャーしたドラマの場合、彼・彼女の知名度が高いであろう一部アジア市場を除き、悲しいくらいに作品の商品力は低くなる。脚本が面白いわけでもなければ、俳優には知名度も実力もないのだから。ちなみにこの真逆にあるのが、アメリカのドラマだと個人的には思う。ストーリーはよく練られているし、ドラマ出演者は著名な映画俳優に比べて馴染みない人が多いが、演技は押しなべて上手い。
 ドラマ以上に海外で苦戦を強いられるのが日本のバラエティ番組である。「バラエティ番組」とは本来、歌あり、コントあり、寸劇ありといった、各種の芸を寄せ集めたような番組を指した。文字通り、varietyであり、あえて言えば『Smap×Smap』が近いような気がする。ただ、アメリカではそういった番組自体が絶滅しつつある。一方、今日の日本でバラエティ番組として捉えられるような、スタジオにタレントや芸人が大勢集まって騒ぐという、お笑い要素が強い番組は、恐らく日本で開発されたもので、日本のテレビ文化の影響を受けた東アジア以外の多くの国では見られないものであり、そのスタイル自体が多くの国の視聴者には違和感がある。
 さらに、日本のバラエティ番組の重要な要素である「笑い」であるが、トークを注意して聴いてみると、他の有名人の話、楽屋オチ、最近の社会現象などがネタになっていることが多い。ところが、それらの題材に関してある程度の知識がないと、笑うどころか、一体何の話かも理解できないのである。果たして日本のバラエティ番組のトークのネタが外国人に受けるだろうか。それじゃなくても、文化が異なれば、笑いの質も異なることは広く信じられている。
 あと、日本のバラエティ番組はスタジオ部分もVTRも相当細かい編集をしたうえで、字幕スーパーとかBGMとか効果音とか足しまくっている。かつて自分が担当していたから言うわけではないが、日本のバラエティ番組の「作りこみ方」は恐らく世界で類を見ないものだと思う。外国で娯楽番組を見ると、もっとボーっとした感じだ。とにかく日本のバラエティ番組は、良く言えば明るく賑やかだが悪く言えばうるさくて、また計算されているものの見ていて疲れる。しかも海外に売るとなると元々番組に入っている日本語のスーパーの上に現地語の字幕を入れたり、あるいは前回書いたようにBGMは使えなかったりするわけで、再び編集したり音処理する必要がある。手間がかかるし、その分のコストもかかる。買う側にとっては購入を躊躇する要因にはなる。(続く)

プロフィール

大場吾郎

Author:大場吾郎
大学教員であり、メディア研究者。専門は映像メディア産業論やコンテンツビジネス。元々は某キー局勤務。
Twitter:@obagoro

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